意味や目的から軽やかに抜けだす「現代のヴァカンス映画」
意味や目的から軽やかに抜けだす
「現代のヴァカンス映画」
あらすじ
旅行会社の仕事で郊外の町を訪れた主人公(小川あん)は、川辺で水切りをしている男(加納土)と出会う。相手との距離を慎重に測っていたが、いつしか二人は上流へ向かって歩きだしていた――
とても美しく、とても感動的でした。
これほどシンプルに奥行きを表現するのは、非常に難しいことだと思います。
重みがあり、クールなこの映画は、まるで石のようでした。
『aftersun/アフターサン』撮影/グレゴリー・オーク
この映画は、レジャーの探求であり、無目的への賛辞であり、
非生産性と偶然の出会いの賞賛であり、
これらすべてが組み合わさって私たちをひきつけてやまないのです。
『ベルリン国際映画祭』フォーラム部門・元責任者/クリスティアナ・ノルド
『石がある』は太田達成を注目すべき人物として静かに知らしめている。
Screen Daily
『石がある』は、「世界」を撮った作品だ。
人間が世界を解釈するのでない。世界がまず存在していること。
世界が、人間や犬や川を包みこむ時間が流れる。
人間が「いる」のではなく、世界が「ある」。
「いる」から「ある」へのシフト。石がある。
風があり、水があり、砂がある。
「ある」ものたちの連鎖がカメラワークを通じて撮られていく。チャコがかわいい。
石岡丈昇(社会学者)
川べりに座ってただ水を見ることに意味を見出さないためにこの映画を見るのかもしれません
金子由里奈(映画監督)
『石がある』は私たちを幼い頃の川辺へと連れ戻す。どんな夢も叶い、限りない日々を過ごせたあの頃へと。
そしてこの映画は私たちに未来も見せてくれる──最良の物語の数々がそうであるように。
優しさや希望、自然や仲間たちと出会う瞬間を求める私たちの未来を。
ダヴィデ・カザーロ(MUBI Notebook)
おだやかな秋の河原で、たまたま出会った二人が、なんとなく一緒に過ごす。
水の流れは、時の流れ。
うっかり、川の中へ放ってしまった石。どの石も、この世にたった一つだ。
じわりと滲む寂しさと、距離感の優しさに、映画という方法の妙味を感じました。
蜂飼耳(詩人)
一つ一つのショット、ひいては映画全体を「弛緩したサスペンス」とも言うべきもので満たしてしまう、
その「周到さ」に最も心惹かれた。
一見、ストーリーテリングなど無関心に見えるが、この映画はほんの少しも面白くあることを諦めていない。
むしろ全体を通じて諦念と欲望が葛藤し続け、ある「諦めきれなさ」が最終的に浮かび上がる。
それは単なる執着だろうか。そうかもしれないが、それを失っては生きる意味もあるまい。
濱口竜介(映画監督)
映画を倍速で見る人も多いみたいだけれど、それで節約された時間は何に使うのだろう。
河原で石を拾って、投げて、凪のような時の流れを、生産性のない行動を贅沢だと感じず人生を送っていきたい。
藤原麻里菜(無駄づくり)
のびやかに、おおらかに、もちろん丹念に……
そんな気風のいい映画の作り方をしたいと夢見ていたら、なんと出会ってしまった。
この映画との出会いを大切にしたいと思う。
出会いの場面に本当に驚いたあと、その後の場面はどれも自然と胸に染み入った。
三宅唱(映画監督)
『石がある』は時間を潰す以外何の目的もない一日のような、一見ささやかな旅へと見る者を連れ出す。
しかし、一度その穏やかなペースと忍耐強い観察に波長を合わせると、根源的で愉快な何かが起こる。
まるでスケールや焦点が入れ替わるように。
同じ小さな庭の中を何時間でも探索し、常に新しい物語を生み出す2人の子供のように、
時間と空間は通常の尺度や価値を失っていく。
川の中の小さな石が宝物になるように、見知らぬ誰かがあなたの大切な一部になり得るのだ。
リヨ・ゴン(映画編集者 / DJ)
◯小川あん(おがわ・あん)
1998年⽣まれ、東京都出⾝。2014年に『パズル』(内藤瑛亮監督)で映画初出演。以降、『天国はまだ遠い』(濱⼝⻯介監督)、『あいが、そいで、こい』(柴田啓佑監督)、『スウィートビターキャンディ』(中村祐太郎監督)などに出演。2023年は『PLASTIC』(宮崎⼤祐監督)、『4つの出鱈目と幽霊について』(山科圭太監督)、『犬』(中川奈月監督)、『彼方のうた』(杉田協士監督)と主演作が立て続けに公開。「DVD&動画配信でーた」「キネマ旬報」にて連載、「週刊文春CINEMA」への寄稿など執筆活動も行なっている。
◯加納土(かのう・つち)
1994年生まれ、神奈川県出身。武蔵大学の卒業制作として「共同保育」で育てられた自身の生い立ちに関するドキュメンタリー映画『沈没家族』の撮影を開始。完成した作品は「PFFアワード」で審査員特別賞を受賞するなど高い評価を得たのち、全国で劇場公開された。2020年、筑摩書房より初の著書『沈没家族 子育て、無限大。』を上梓。『石がある』では演技未経験ながら、主役を務めあげた。
◯太田達成(おおた・たつなり)/監督・脚本
1989年生まれ、宮城県出身。植物の研究をしていた大学時代、レンタルビデオショップで偶然手にとった『青の稲妻』(ジャ・ジャンクー監督)に衝撃を受け、友人と映画制作を開始。初の短編『海外志向』で「京都国際学生映画祭」グランプリを受賞したのち、東京藝術大学大学院で黒沢清、諏訪敦彦に師事した。修了作品『ブンデスリーガ』は「PFFアワード」、スペイン「FILMADRID」等に入選。近年はスタッフとして『Oasis』(大川景子監督)、『SUPER HAPPY FOREVER』(五十嵐耕平監督)、『すべての夜を思いだす』(清原惟監督)等にも参加した。
◯大川景子(おおかわ・けいこ)/編集
東京藝術大学大学院映像研究科修了。2009年に編集助手として『ユキとニナ』に参加したことがきっかけとなり、活動スタート。近年では『映画:フィッシュマンズ』(手嶋悠貴監督)、『夢半ば』(安楽涼監督)、『ケイコ 目を澄ませて』(三宅唱監督)、『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』(金子由里奈監督)、『彼方のうた』(杉田協士監督)、『熱のあとに』(山本英監督)、『夜明けのすべて』(三宅唱監督)などの編集を担当している。『ケイコ 目を澄ませて』では日本映画・テレビ編集協会賞を受賞。監督作『Oasis』(2023)が山形国際 ドキュメンタリー映画祭に出品された。
◯清原惟(きよはら・ゆい)/助監督
映画監督、映像作家。17歳のときはじめて友人と映画をつくってから今まで、映画や映像をつくりつづけている。監督作『わたしたちの家』と『すべての夜を思いだす』がそれぞれ「ベルリン国際映画祭
フォーラム部門をはじめとした様々な国際映画祭で上映される。ほかの活動として、土地やひとびとの記憶について、リサーチを元にした映像作品を制作している。
◯黄永昌(こう・よんちゃん)/整音
1976年東京生まれ。映画美学校フィクションコース終了後、音響・菊池信之氏のもとで助手をしながら様々な自主映画に参加。録音・音響を手がけた作品に、『TOCHKA』(松村浩行監督)、『ヘヴンズ・ストーリー』(瀬々敬久監督)、『ソレイユのこどもたち』(奥谷洋一郎監督)、『あえかなる部屋 内藤礼と、光たち』(中村佑子監督)、『映画:フィッシュマンズ』(手嶋悠貴監督)、『彼方のうた』(杉田協士監督)などがある。
◯坂元就(さかもと・なる)/録音
東京藝術⼤学⼤学院映像研究科サウンドデザイン領域を修了。在学中に映画の録音・整音を学ぶ。参加作品に『道草』(片山享監督)、『夢半ば』(安楽涼監督)、『ほなまた明日』(道本咲希監督)など。
◯深谷祐次(ふかや・ゆうじ)/撮影
東京藝術⼤学⼤学院映像科にて柳島克⼰撮影監督のもと映画の撮影、照明を学ぶ。撮影監督作品に『4つの出鱈目と幽霊について』(山科圭太監督)、『MADE IN YAMATO「三⽉の光」』(清原惟監督)、『夢半ば』(安楽涼監督)など。
◯王舟(おうしゅう)/音楽
上海出身、日本育ちのシンガーソングライター。2014年にバンド編成で制作したデビューアルバム『Wang』をfelicityから発表して以降、2ndアルバム『PICTURE』(2016年)、BIOMAN(neco眠る)と共作のインストアルバム『Villa Tereze』(2018年)、3rdアルバム『Big fish』(2019年)、インストアルバム『Pulchra Ondo』(2020年)をリリース。CMへの楽曲提供、他アーティスト楽曲へのゲスト参加、プロデュースなどもおこなっており、これまでにドラマ『コタキ兄弟と四苦八苦』、『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』、『「時をかけるな、恋人たち」』などの劇伴を担当した。
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ナゴヤキネマ・ノイ|11月23日(土)〜|052-734-7467愛知県ナゴヤキネマ・ノイ|11月23日(土)〜|052-734-7467
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松本CINEMAセレクト|12月13日(金)|0263-98-4928長野県松本CINEMAセレクト|12月13日(金)|0263-98-4928
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フォーラム山形|1月31日(金)〜|023-632-3220山形県フォーラム山形|1月31日(金)〜|023-632-3220
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